| 事件番号 | 令和4年(行ツ)第318号 |
|---|---|
| 裁判所 | 最高裁判所第三小法廷 |
| 判決日 | 2024-03-26 |
| 通称 | 同性パートナー犯罪被害者給付金訴訟 |
| 出典 | 裁判所ウェブサイトの判決文 |
3行でわかる判決
- 同性のパートナーを犯罪で亡くした男性が、国の「遺族給付金」を受け取れる遺族に当たるかが争われました。
- 最高裁は、犯罪被害者と同性の人も、法律が遺族に含めている事実婚の相手に当たり得ると判断しました。
- ただし、この男性が実際にそれに当たるかどうかはまだ決まっておらず、審理は名古屋高等裁判所に差し戻されました。
何があったのか
犯罪によって家族を亡くした人などに対しては、国が「犯罪被害者等給付金」を支給する制度があります。根拠となっているのは、犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(以下「犯給法」)です。このうち、犯罪で亡くなった人の遺族に一時金として支給されるのが「遺族給付金」です。
判決によると、この裁判を起こした男性は、平成6年頃に別の男性と交際を始め、その頃から同居して生活していました。ところが、そのパートナーは平成26年12月22日、第三者の犯罪行為によって亡くなりました。
男性は平成28年12月12日、自分は犯給法が遺族に含めている事実婚の相手に当たるとして、遺族給付金の支給を申請しました。しかし、愛知県公安委員会は平成29年12月22日付けで、男性はこれに当たらないなどとして、支給しないとの裁定をしました。男性はこの裁定の取消しを求めて裁判を起こしました。
何が争われたのか
犯給法5条1項は、遺族給付金を受け取れる遺族を順番に定めています。第一順位は犯罪被害者の配偶者で、かっこ書きで「婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあつた者」を含むとされています。いわゆる事実婚(内縁)の相手のことです。その次に、被害者の収入で生計を維持していた子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹、さらにその他の子・父母などが続きます。
争点は、このかっこ書きの事実婚の相手に、被害者と同性のパートナーが含まれ得るかどうかでした。
原審の名古屋高等裁判所は、含まれないと判断していました。このかっこ書きは、民法上の婚姻と同視できる関係にありながら届出をしていない人を対象にしたもので、「婚姻の届出ができる関係」であることが前提になっている、という理由です。そのうえで、この規定が憲法14条1項(法の下の平等)などに反するともいえないとして、男性の請求を退けていました。
裁判所はどう判断したか
最高裁第三小法廷は、原審の判断を是認できないとして、原判決を破棄し、事件を名古屋高等裁判所に差し戻しました。
最高裁がまず重視したのは、この給付金制度の目的です。犯給法は、平成13年と平成20年の改正を経て、犯罪で不慮の死を遂げた人の遺族などの被害を早期に軽減し、再び平穏な生活を営めるよう支援することなどを目的に掲げるようになりました。平成16年には犯罪被害者等基本法も制定され、給付金制度の充実が国の基本的な施策の一つとされています。最高裁は、こうした経緯から、5条1項1号の解釈にあたっては制度の目的を十分に踏まえる必要があるとしました。
そのうえで最高裁は、5条1項が遺族として掲げているのは、被害者の死亡によって精神的・経済的な打撃を受けることが想定され、その軽減を早く図る必要性が高い人たちだと位置づけました。事実婚の相手が含まれているのも、届出がなくても、関係や共同生活の実態からみて、法律上の配偶者と同じような打撃を受けると考えられるからだ、という理解です。
そして、そうした打撃を受け、支援の必要性が高い場合があることは、共同生活を送っていた人が被害者と「犯罪被害者と異性であるか同性であるかによって直ちに異なるものとはいえない」と述べました。
そのため、同性であることだけを理由に事実婚の相手に当たらないとするのは、制度の趣旨に照らして相当でないとしました。また、同性の人が当たり得ると読んでも、条文の文言から外れる解釈にはならない、としています。
結論として、最高裁は、犯罪被害者と同性の人も、このかっこ書きの者に「該当し得る」と判断しました。ただし、この男性が実際に亡くなったパートナーとの間でそのような関係にあったかどうかは、さらに審理を尽くさせるため、高裁に差し戻しています。
この判決には、裁判官1人の反対意見と、1人の補足意見が付いています。
反対意見の今崎幸彦裁判官は、同性パートナーが第一順位に入ると、被害者の収入で生活していた子などが後順位となって支給対象から外れることになる点や、遺族給付金が損害の埋め合わせという性格も持つ点などを指摘しました。そして、同性パートナーシップを法体系の中でどう位置付けるかについて議論の蓄積が十分でない中で、多数意見には「先を急ぎすぎているとの印象を否めない」として、上告を棄却すべきだとしました。
一方、補足意見の林道晴裁判官は、制度の目的を重視した解釈が相当であると述べつつ、同性の人が当たるといえるのは、関係や共同生活の実態・継続性などからみて、異性間の内縁関係に準ずる関係にあったといえる場合だと説明しています。
この判決の意味
この判決は、同性のパートナーが、犯給法のいう事実婚の相手に当たり得ることを最高裁が初めて示したものとして報道されました。
ここで押さえておきたいのは、最高裁が決めたのは、同性だというだけで対象から外すことはできない、という解釈の部分だという点です。同性のパートナーであれば誰でも受け取れる、と判断したわけではありません。実際に対象となるかは、関係や共同生活の実態などをもとに個別に判断されることになり、この事件でもその判断は高裁に委ねられました。
また、法律には、事実婚の相手を配偶者と同じように扱うため、同じ文言や似た文言を使った規定がほかにも数多くあります。しかし補足意見は、今回の判断はあくまで犯罪被害者の遺族を支援するという遺族給付金に特有の目的を踏まえたものであり、ほかの法令の規定について判断したものではない、と明記しています。ほかの制度でどう扱われるかは、それぞれの制度の趣旨に照らして別に検討されることになります。
なお、この記事は判決当時の犯給法5条1項1号の規定に基づく判断を紹介したものです。
本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。