MENU

国の裁決で取り消された不承認を、知事は維持できるのか

事件番号令和5年(行ヒ)第143号
裁判所最高裁判所第一小法廷
判決日2023-09-04
出典裁判所ウェブサイトの判決文

3行でわかる判決

  • 辺野古沿岸の埋立てについて、設計変更を承認するよう国土交通大臣が沖縄県に出した是正の指示が、違法な国の関与に当たるかが争われました。
  • 最高裁は、不承認を取り消す裁決が出た以上、知事は裁決の趣旨に従って改めて処分をする義務を負い、同じ理由で承認しないままでいることは法令違反に当たると判断しました。
  • 県側の上告は棄却され、是正の指示は適法とした高裁の結論が維持されました。最高裁は、設計変更の中身が要件を満たすかどうかには踏み込んでいません。
目次

何があったのか

普天間飛行場の代替施設を沖縄県名護市辺野古の沿岸に造るための埋立てをめぐる事件です。

国の機関である沖縄防衛局は、平成25年3月に埋立ての承認を沖縄県知事に求め、同年12月に承認を受けました。その後に判明した事情を踏まえ、地盤改良工事を追加するなどの必要が生じたため、沖縄防衛局は令和2年4月21日付けで、埋立地の用途と設計の概要を変更することの承認を知事に申請しました。

知事は令和3年11月25日付けで、この申請は公有水面埋立法の定める要件に適合しないなどとして、承認しない処分をしました。

沖縄防衛局はこれを不服として、同年12月7日付けで、公有水面埋立法を所管する国土交通大臣に審査請求をしました。国土交通大臣は、知事の判断は裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したもので違法だとして、令和4年4月8日付けで不承認を取り消す裁決をしました。

それでも知事は承認をしませんでした。そこで国土交通大臣は同年4月28日付けで、地方自治法に基づき、沖縄県に対して設計変更を承認するよう是正の指示を出しました。

知事はこの指示を不服として、国地方係争処理委員会に審査を申し出ましたが、同年8月19日付けで、指示は違法でないとの結果が通知されました。知事は同月24日、指示の取消しを求めて裁判を起こしました。

何が争われたのか

埋立ての承認に関する県の事務は、法定受託事務とされています。本来は国が果たすべき役割に関わる事務を、法律に基づいて都道府県などが処理する仕組みです。

地方自治法245条の7第1項は、都道府県の法定受託事務の処理が法令の規定に違反していると認められるときなどに、所管の大臣が是正の指示を出せると定めています。争点は、知事が設計変更を承認しないでいることが、この法令違反に当たるのかどうかでした。

知事側は、申請が埋立法の要件に適合しないとした自らの判断は適法であり、したがって是正の指示のほうが違法だと主張しました。

1審に当たる福岡高裁那覇支部は、令和5年3月16日に判決を言い渡し、是正の指示は適法だとしました。報道によると、高裁は、知事の不承認には裁量権の逸脱・濫用があるとして県の請求を退けています。知事側が上告受理を申し立て、最高裁が判断することになりました。

裁判所はどう判断したか

最高裁は、知事の不承認の中身が正しかったかどうかではなく、不承認を取り消す裁決が出た後に知事がどのような義務を負うか、という点から結論を導きました。

1. 裁決は処分をした行政庁を拘束する

法定受託事務についての知事の処分に対する審査請求には、原則として行政不服審査法が適用されます。最高裁はまず、同法52条の内容を確認しました。裁決は関係する行政庁を拘束し、申請を退けた処分が裁決で取り消された場合、処分をした行政庁は次の義務を負うという定めです。

裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない

最高裁は、このことは、審査をした側が処分をした側の上級行政庁であるかどうかによって変わらないとしました。そしてこの規定の趣旨を、裁決の内容を速やかに実現して、審査請求をした者の権利利益を簡易迅速かつ実効的に救済し、行政の適正な運営を確保することにあると説明しています。

2. 同じ理由で承認しないことは許されない

そのうえで最高裁は、不承認を取り消す裁決が出たのに、知事が同じ理由で承認しないことが許されるとすればどうなるかを検討しました。その場合には、次のような事態が生じると指摘しています。

処分の相手方が不安定な状態に置かれ、紛争の迅速な解決が困難となる事態

また、こうした裁決そのものは、地方自治法上、国と自治体との間の紛争処理の対象にならないとされていることにも触れ、その点に照らしても相当でないとしました。

3. この事件への当てはめ

結論として最高裁は、法定受託事務に関する申請を退けた知事の処分が、根拠となる法令に違反するとして裁決で取り消された場合、知事が同じ理由に基づいて申請を認める処分をしないことは、地方自治法245条の7第1項にいう法令の規定に違反していると認められるものに当たる、という判断を示しました。

この事件では、裁決は不承認が埋立法の規定に違反することを理由にこれを取り消しており、知事は不承認と同じ理由で承認をしていないといえるので、法令違反に当たるとされました。

最高裁は、是正の指示を適法とした高裁の判断について、こう述べています。

結論において是認することができる

裁判官5人の全員一致で、上告は棄却されました。

この判決の意味

この判決で押さえておきたいのは、最高裁が何を判断し、何を判断していないかです。

最高裁が示したのは、法定受託事務について不承認を取り消す裁決が出た場合に、知事はその裁決に拘束され、同じ理由で承認を拒み続けることはできない、という考え方です。国と都道府県の意見が食い違ったときに、審査請求に対する裁決がどこまでの効力を持つのかについて、最高裁としての整理が示されたといえます。

一方で、追加の地盤改良工事を含む設計変更が埋立法の要件を満たしているのか、知事が挙げた不承認の理由に根拠があったのかについて、最高裁の判決文は判断を示していません。高裁の判断を、理由ではなく結論において是認するという表現にとどめているのは、そのためだと読めます。

なお、この判断は、判決当時の行政不服審査法と地方自治法の規定に基づくものです。また、裁決が法令違反を理由に処分を取り消し、知事が同じ理由で承認をしなかったという事情を前提にしています。裁決の後に別の理由で改めて判断する場合についてまで、この判決が結論を述べているわけではありません。

その後・実務への影響

報道によると、この判決の後も知事は設計変更を承認せず、国土交通大臣は2023年10月5日、知事に代わって承認をする代執行に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こしました。同支部は同年12月20日、知事に承認を命じる判決を言い渡しています。

知事が承認しなかったため、国土交通大臣は同月28日、代執行として設計変更を承認しました。県側は高裁判決を不服として上告しましたが、最高裁は2024年2月に上告を受理しない決定をし、県側の敗訴が確定したと報じられています。

本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次