| 事件番号 | 令和6年(許)第17号 |
|---|---|
| 裁判所 | 最高裁判所第一小法廷 |
| 判決日 | 2025-10-20 |
| 出典 | 裁判所ウェブサイトの判決文 |
3行でわかる判決
- 借金を返せなくなった政党について、債権者が破産手続開始を申し立てられるかが争われました
- 最高裁は、その政党が解散していなくても、破産手続開始の決定を受ける適格があると判断しました
- 政党の政治活動の自由は、負った債務の清算を免れさせるものではない、という整理が示されました
何があったのか
政党のなかには、法律上の「法人」になっているものがあります。政党交付金の交付を受ける政党等に対する法人格の付与に関する法律(以下「法」)が、政党交付金を受ける政党などに法人格を与えているためです。法人になると、政党そのものの名義で財産を持ち、契約を結び、裁判の当事者にもなれます。
この事件で問題になったのも、法によって法人となった政党(判決文の言葉では「法人である政党等」)でした。その政党に対して債権を持っていた相手方が、政党について破産手続開始の申立てをしたのが事の発端です。
裁判所は破産手続開始の決定をしました。政党側はこれを不服として抗告しましたが、東京高等裁判所は令和6年5月30日、その抗告を退けます。政党側はさらに許可抗告を申し立て、争いは最高裁に持ち込まれました。報道によれば、この政党は「みんなでつくる党」です。
何が争われたのか
争点は一つ、解散していない政党を破産手続の対象にできるのかという点です。
政党側の言い分は、おおよそ次の三つでした。
第一に、解散していない政党が破産手続の対象になれば、政党交付金を含む財産の管理処分権を失うことになる。それは、国が交付金を出すにあたって政党の政治活動の自由を尊重すべきだとする政党助成法4条1項の趣旨目的に反する。
第二に、破産手続のなかで行われる債権者への配当が、政党交付金を使った支出として認められないとされた場合、その分について総務大臣から交付金の返還命令(政党助成法33条2項1号)を受けかねない。
第三に、法10条2項は法人である政党等が解散する場合を定めているが、そこに破産手続開始の決定は挙げられていない。これは、解散していない限り破産手続の対象にならないという趣旨で読むべきだ。
要するに、政党にはお金の面で特別な仕組みが用意されているのだから、破産という一般の制度をそのまま当てはめるべきではない、という主張です。
裁判所はどう判断したか
最高裁は、政党側の主張をいずれも退けました。
出発点に置かれたのは、破産手続の一般ルールです。破産法13条が民事訴訟法28条を準用していることから、最高裁はこう述べます。
民法上の権利能力を有する者は、破産手続開始の決定を受けるべき適格を有するのが原則である
法律上「人」として扱われ、自分の名前で財産を持てる存在であれば、原則として破産手続の対象になる。法人となった政党も、この原則の外には置かれない、ということです。
次に最高裁は、法そのものの作りに目を向けます。法10条の9は、解散した法人である政党等が破産手続開始の決定を受けた場合についての規定です。つまり法は、政党が破産手続にかかる場面を想定して条文を置いている。そうであれば、政党がおよそ破産手続の対象になり得ない性質の法人だとは考えられない。しかも、破産手続開始の原因となる事実があるときに手続の対象とする必要が生じ得る点は、解散した政党でもそうでない政党でも変わらない——そう指摘しました。
では、政党側が持ち出した法10条2項、つまり解散する場合のなかに破産が入っていないことは、どう読めばよいのか。最高裁の説明はこうです。
破産手続の開始によって解散せず、破産手続が終了したときにもその法人格を失わない
破産しても政党という法人格そのものは消えない。条文はその意味にとどまる、という読み方です(破産法35条参照)。解散する場合に挙がっていないことは、破産の対象外だという意味ではない、というわけです。
政党交付金との関係についても、最高裁は正面から答えました。政党助成法4条1項が守ろうとしているのは、国が交付金を出すにあたって政党の政治活動の自由を阻害しないようにすることである。破産手続の開始によって政党が財産の管理処分権を失うことがあっても、
当該財産は当該法人の自由な政治活動のために生じた破産債権に対する配当の原資等になる
のだから、その趣旨目的に反しない、と述べています。政党が自由に活動した結果として生まれた債務を清算するために財産が使われるのであって、政治活動の自由と衝突するわけではない、という理屈です。
交付金の返還命令を受けるおそれについても、そうした場合があり得るとしても、解散していない限り破産手続の対象にならないと考える根拠にはならない、として退けました。
結論として最高裁は、法人である政党等は、法10条1項または2項によって解散したものでない場合であっても、破産手続開始の決定を受けるべき適格を有すると判断しました。同じ趣旨の原審の判断は正当だとして、抗告は棄却されています。裁判官全員一致の意見でした。
この判決の意味
一つめは、政党にお金を貸したり取引をしたりした人の立場から見た意味です。相手が法人になっている政党であれば、他の法人と同じように破産手続を使って清算を図る道がある。政党だからという理由で手続の入り口で止められることはない、という点がはっきりしました。
二つめは、「政治活動の自由」という言葉の使いどころを切り分けた点です。政党助成法4条1項が想定しているのは、国のお金の出し方が政党の活動を縛らないようにすることであって、政党が自ら負った債務の清算を免れさせることではない。最高裁は、そこを分けて考えました。
三つめは、破産しても政党の法人格は残るという点が示されたことです。破産手続の開始によって政党が解散するわけではなく、手続が終わっても法人格を失わない。もっとも、法人格が残ることと、政党として実際に活動を続けられるかどうかは別の問題です。
なお、これは2025年10月の決定であり、当時の法令にもとづく判断です。この決定は最高裁の判例集(民集第79巻7号2765頁)に登載されています。
その後・実務への影響
報道によれば、この決定によって破産手続開始の決定が確定し、手続はそのまま進むことになったと伝えられています。
一方で、この決定が直接扱ったのは、法によって法人格を得た政党です。法人になっていない政治団体について同じことが当てはまると述べたものではありません。政党という団体をめぐる争いは、その団体が法律上どういう形をとっているかによって、答えが変わり得ます。
本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。