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不法行為も「法令に違反」にあたる 宗教法人の解散事由をめぐる最高裁の判断

事件番号令和6年(許)第31号
裁判所最高裁判所第一小法廷
判決日2025-03-03
出典裁判所ウェブサイトの判決文

3行でわかる判決

  • 宗教法人の解散を命じる事由である「法令に違反」する行為に、民法上の不法行為が含まれるかが争われた
  • 最高裁は「含まれる」と判断し、所轄庁が報告を求めたことを適法として、報告しなかった代表役員への過料10万円を維持した
  • 解散命令の議論が始まる入り口を左右する、最高裁として初めての判断
目次

何があったのか

宗教法人法は、裁判所が宗教法人に解散を命じることができる場合を定めている。その一つが81条1項1号で、条文はこうなっている。

法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと。

あわせて同法78条の2第1項は、所轄庁は解散事由にあたる疑いがあると認めるとき、法律を施行するために必要な限度で、その宗教法人の業務や事業の管理運営に関する事項について報告を求めることができると定めている。

この事件の宗教法人は、世界平和統一家庭連合(報道では旧統一教会と呼ばれている)である。所轄庁である文部科学大臣は、信者らが行った献金の勧誘などが民法709条の不法行為にあたるとして信者らの損害賠償責任を認めた民事訴訟の判決が22件あることなどを踏まえ、この法人に81条1項1号にあたる疑いがあると判断した。そのうえで、令和4年11月から令和5年7月にかけて7回にわたり報告を求めた。

しかし法人は、求められた事項の一部について報告をしなかった。文部科学大臣は令和5年9月、これは代表役員などを過料に処する場合を定めた88条10号にあたるとして東京地裁に通知し、東京地裁は令和6年3月、法人の代表役員を過料10万円に処する決定をした。東京高裁もこれを維持したため、代表役員が最高裁に不服を申し立てた。

何が争われたのか

代表役員側の主張は、条文の読み方に絞られていた。民法709条は、故意または過失で他人の権利などを侵害した者が損害賠償責任を負うと定めた規定にとどまり、ある行為を禁止する条文ではない。だから不法行為をしても、それは709条に違反したことにはならない。したがって宗教法人法81条1項1号にいう「法令に違反」する行為にもあたらない——という理屈である。

形式論に見えるが、実際には効き方が大きい。不法行為が「法令に違反」に含まれないとすれば、刑罰法規に触れるような行為がない限り、そもそも解散事由の疑いを立てられない。文部科学大臣が報告を求める前提が崩れ、報告しなかったことを理由に過料を科すこともできなくなる、という関係になっている。

裁判所はどう判断したか

最高裁第一小法廷は、裁判官全員一致で抗告を棄却した。

まず条文の文言について。民法709条が行為を禁止する規定であるとはいえないことは認めたうえで、不法行為にあたる行為を次のように位置づけた。

不法行為法上違法と評価される行為、すなわち一定の法規範に違反する行為

そして行為者は709条という法令の規定によって損害賠償責任を課せられるのだから、これを「法令に違反」する行為と読んでも条文の文理に反しない、とした。

次に条文の趣旨である。81条1項1号が解散命令の事由を定めているのは、その事由がある場合には宗教団体に法律上の能力を与えたままにしておくことが不適切になるため、司法手続によって法人格を失わせられるようにするためだ——と、過去の判例(オウム真理教の解散命令をめぐる平成8年1月30日の第一小法廷決定)を引きながら整理した。そのうえで、不法行為は故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害するものである以上、著しく公共の福祉を害する事態を招き、法人格を与えたままにしておくのが不適切になることも十分ありうる、とした。だからこの読み方は条文の趣旨にも沿う、という筋である。

信教の自由への目配りもある。最高裁は、解散命令は法人格を失わせる効力を持つにとどまり、

信者の宗教上の行為を禁止したり制限したりする法的効果を一切伴わない

ものであることを確認した。加えて、81条1項1号にあたるというためには単に法令に違反するだけでは足りず、「著しく公共の福祉を害する」と明らかに認められる行為でなければならない。これらに照らせば、不法行為を含めて読んだとしても、解散命令の事由を定めた規定として不明確だとも過度に緩やかだともいえない、と述べている。

もう一点、代表役員側は、代表役員その他の幹部が問題の行為をした場合でなければその法人に解散事由があるとはいえない、とも主張していた。最高裁は、条文上そのような限定はなく、他にそう読むべき根拠も見当たらないとしてこれを退けた。信者らの行為であっても、法人の解散事由の判断材料になりうるという整理になる。

この判決の意味

争われた金額は過料10万円で、決定そのものは解散命令ではない。それでも判断の中身は、解散命令の議論が始まる入り口にかかわっている。刑罰法規に触れる行為がなくても、民事の不法行為が積み重なっていれば81条1項1号の検討対象になりうる。その読み方を最高裁が正面から示した点に、この決定の位置づけがある。

ただし、広く読めるようになったのは「法令に違反」という部分だけである。実際に解散を命じるには、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為でなければならないという要件が残る。最高裁自身も、この要件があることを、規定が過度に緩やかにならない理由として挙げていた。ここを飛ばして、不法行為さえあれば解散させられる、と読むのは決定の射程を超えることになる。

その後・実務への影響

この過料の手続と並行して、文部科学大臣はこの法人の解散命令を請求していた。報道によれば、東京地裁は2025年3月に解散を命じ、東京高裁も2026年3月に法人側の即時抗告を退け、2026年6月には最高裁が特別抗告を退けて解散命令が確定した。民法上の不法行為を理由に宗教法人の解散を命じる判断が確定したのは、これが初めてとされている。

本記事で取り上げた決定は、その解散命令の当否そのものではなく、所轄庁が報告を求めたことの適法性をめぐって示されたものである。もっとも、そこで示された条文の読み方は、解散命令の手続とも地続きの論点だった。

本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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