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よそのごみで汚れた土地、後始末の費用は誰が持つのか

事件番号令和5年(受)第606号
裁判所最高裁判所第一小法廷
判決日2025-07-14
出典裁判所ウェブサイトの判決文

3行でわかる判決

  • 委託した業者が別の市の処分場でごみを不適正に埋め立て、汚染対策の工事費を、処分場が立地する市が負担した
  • 最高裁は、ごみを出して処分を委託した側の市町村にも対策を講じる法的義務があるとして、費用の請求を退けた原審の判断を破棄した
  • 区域の外に委託して処分すれば責任も外に出る、という整理は採られなかった
目次

何があったのか

福井県敦賀市にある民間の廃棄物最終処分場が舞台です。

複数の市町村と、ごみ処理の事務を共同で行うために市町村がつくった一部事務組合が、自分たちの区域で出た一般廃棄物の処分を、廃棄物処理業者のキンキクリーンセンター株式会社に委託していました。その処分の場所が、敦賀市内にあるこの処分場でした。

同社は平成8年5月以降、福井県知事に届け出た埋立容量を大幅に超える量の廃棄物を埋め立て、平成12年8月に県の行政指導を受けて搬入を停止します。その後、平成18年2月には、県と敦賀市が設けた協議会が、埋立地からの浸出液が混じった地下水が処理されないまま周辺の河川に流れ出ていること、その地下水に有害物質が基準値を超えて含まれ、下流域の農作物や井戸水などに影響が出るおそれがあることを報告しました。

敦賀市長は同年5月、廃棄物処理法に基づき、同社に対して処分場から外部への漏水防止対策や浸出液の浄化対策などを講ずべきことを命じます。そして市は同年7月以降、この命令に係る法19条の7第1項に基づく措置として、福井県とともに施設の設置工事などを実施しました。

その後、敦賀市は、この工事などによってごみを出した側の市町村等の事務を管理したなどと主張して、費用の一部にあたる金額の支払いを求めて訴えを起こしました。

何が争われたのか

民法には事務管理という仕組みがあります。頼まれたわけではないのに他人の事務を処理した人は、相手方に必要な費用の償還を求めることができる、というものです(697条1項、702条1項)。留守にしている隣家の壊れた雨どいを直してあげるような場面をイメージすると分かりやすいでしょう。

そこで前提になるのが、敦賀市が行った工事は「他人の事務」だったのか、という点です。つまり、ごみを出して処分を委託した側の市町村等が、そもそも汚染対策を講じる法的義務を負っていたのか。負っていなかったのであれば、敦賀市の工事は自分の事務にすぎず、費用を請求する筋道が立たなくなります。

裁判所はどう判断したか

原審の名古屋高裁金沢支部は、区域外での不適正な処分について委託した市町村等が対策義務を負うと具体的に定めた法令の規定が見当たらないことなどから、そうした義務は認められないと判断し、敦賀市の請求を棄却すべきものとしました。

最高裁第一小法廷は、この判断は是認できないとしました。

まず、廃棄物処理法が市町村に区域内の一般廃棄物の処理責任を負わせている理由を、こう読み解きます。個々の住民に処理の責任を負わせたのでは継続的で安定した処理が期待できないため、住民の福祉の増進を広く担う市町村に、排出者に代わる責任を負わせたものだ、と。

そのうえで、法は市町村が区域外に委託して処分する場合も当然に想定しており、その処分が基準に適合せず生活環境の保全上の支障が生じた場合、排出者に代わる責任を全うするには委託した市町村自身が対策を講じる必要がある、としました。

処分場が立地する側の市町村が、その住民の健康や生活環境を守る観点から動くことを求められる場面はある。それでも委託した側の責任が消えるわけではない、というのが判断の骨格です。判決は、委託した市町村について次のように述べています。

本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にある

理由として挙げられたのは、委託した市町村が排出者に代わる責任を負っていることに加えて、

その区域内において処分を行うことに伴う様々な事実上の負担を免れるという利益を得ている

という点です。そう解することが一般廃棄物の円滑な処理に資するものであり、

関係市町村間の衡平にもかなう

とも述べました。

さらに最高裁は、区域外の者に処分を委託する市町村が、あらかじめ立地する市町村に対して受託者の氏名や名称、埋立処分であれば埋立地の所在地と残余の埋立容量などを通知するものとされ、1年以上にわたり継続して委託するときは処分の実施状況を年1回以上実地に確認するものとされていることも、この理解を裏付けると指摘しています。委託した側が一部事務組合であっても同じだとしました。

結論として、こうした場合に立地する市町村が支障の除去等の措置を講じたときは、委託した市町村の事務を管理したものとして事務管理が成立し得るとし、原判決を破棄して名古屋高裁に差し戻しました。裁判官全員一致の意見です。

この判決の意味

注意したいのは、この判決が敦賀市の請求を認めたものではないことです。事務管理が成立し得るという法律論を示したうえで、実際に償還を求められる費用の額などは高裁で改めて審理されることになります。決着がついたわけではありません。

意味があるのは、区域の外に委託しても責任は外に出ない、という整理が最高裁のレベルで示された点です。一般廃棄物の処理は市町村の仕事ですが、自前の施設を持たず、区域外の民間処分場に委託している自治体は珍しくありません。委託先が不適正な処分をして環境に支障が生じたとき、その後始末を立地する自治体だけが背負うのか、ごみを出した自治体も分担するのか。今回の判断は、後者の方向を指し示したことになります。

住民の側から見ると、自分の住む自治体が出したごみが遠くの処分場で問題を起こした場合、その対策の費用が自分たちの自治体の負担として返ってくる可能性がある、という話でもあります。

その後・実務への影響

差し戻し後の審理では、償還を求めることができる費用の範囲や金額が主な論点になります。

なお、本記事は判決の時点における廃棄物処理法および民法に基づく判断を紹介したものです。

本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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