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勾留中に家族とも会えない「接見等禁止」に、最高裁が待ったをかけた

事件番号令和7年(し)第672号
裁判所最高裁判所第三小法廷
判決日2025-08-14
出典裁判所ウェブサイトの判決文

3行でわかる判決

  • 盗撮未遂の疑いで勾留された人に、弁護人以外との面会を一切禁じる裁判(接見等禁止)が出され、母親とも会えなくなった
  • 最高裁は、この事案では面会を禁止するほどの証拠隠しのおそれはうかがわれないとして、これを追認した地裁の決定を取り消した
  • 面会禁止を認めるなら、証拠隠しの現実的なおそれを裏づける具体的な事情を示す必要がある、という審査のあり方が示された
目次

何があったのか

事件の疑いは、令和7年5月9日の夜、愛媛県西予市のアパートで、浴室の窓から携帯電話を差し入れて、住んでいた女性の姿を撮影しようとした、というものでした。相手に気づかれたため撮影には至っておらず、性的姿態等撮影の「未遂」として捜査が進みます。

この人は同年8月1日に勾留されました。勾留は、逃亡や証拠隠しのおそれがあるときに、身柄を留め置く手続きです。そして同じ日、検察官の請求により、裁判所は弁護人(および弁護人になろうとする人)以外の人との面会や物の受け渡しを禁じる裁判をしました。これが接見等禁止です。刑事訴訟法81条が定めるもので、証拠を隠したり口裏を合わせたりするのを防ぐことを目的としています。

接見等禁止が付くと、勾留されている間、家族であっても面会できません。この事件でも、母親との面会が禁じられました。弁護人はこれに納得せず、松山地方裁判所に不服を申し立てます。これが準抗告と呼ばれる手続きです。

しかし松山地裁は同年8月4日、この申立てを退けました。疑われている行為の性質や内容、本人の供述の状況と内容からすれば、犯罪そのものや重要な情状に関する事実について、関係者と口裏を合わせるなどして証拠を隠すと疑うに足りる相当な理由がある。だから母親を含めて面会を禁じた判断は正当だ、という理由づけでした。

この決定に対してさらに最高裁へ特別抗告が申し立てられ、令和7年8月14日、最高裁判所第三小法廷が決定を出しました。

何が争われたのか

争点は、接見等禁止という強い措置を認めるとき、不服申立てを審理する裁判所(ここでは松山地裁)がどこまで踏み込んで審査し、どこまで理由を示さなければならないか、という点です。

勾留そのものにも、証拠隠しのおそれという要件があります。接見等禁止は、その勾留にさらに上乗せして、外部との接触を断つ措置です。つまり、勾留が認められたからといって自動的に付いてよいものではなく、それとは別に、面会を禁じなければ防げないような証拠隠しの危険が要るのではないか。地裁の決定は、事案の性質と供述状況を挙げるだけで、その危険を具体的に示していませんでした。

なお最高裁は、弁護人の主張そのものは特別抗告の理由にはあたらないとしたうえで、職権で判断に踏み込んでいます。

裁判所はどう判断したか

最高裁は、原決定を取り消し、事件を松山地方裁判所に差し戻しました。裁判官全員一致の結論です。

出発点となったのは、この事件の見立てでした。最高裁は、疑われている行為の性質や内容を見る限り、本人が容疑を否認していても、

勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれがあるとはうかがわれない事案

だとしました。そのうえで、そうした事案で不服申立てを審理する裁判所が何をすべきかを示します。もとの裁判が不合理でないかを審査するにあたっては、

接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあることを基礎付ける具体的事情

が記録から認められるかどうかを調べる必要がある。そして、

原々裁判を是認する場合には、そのような事情があることを指摘する必要があった

というのです。松山地裁の決定は、そのような事情を何ら指摘しないまま、もとの裁判を追認していました。最高裁はここに刑事訴訟法81条と426条の解釈適用を誤った違法があり、それが決定に影響を及ぼしていて、取り消さなければ著しく正義に反すると判断しました。

注意したいのは、最高裁が「接見等禁止は認められない」と結論づけたわけではない点です。判断のやり直しを命じたのであって、差戻しを受けた松山地裁が改めて審理します。

この判決の意味

接見等禁止は、有罪が決まる前の段階で、家族との面会まで断つ措置です。最高裁はこの決定で、それを認めるにはどこまでの検討が必要かを、不服申立てを審理する裁判所に向けて具体的に示しました。

ポイントは二つあります。ひとつは、証拠隠しのおそれを抽象的に言うだけでは足りず、面会によって実際に証拠隠しに及ぶ現実的なおそれを裏づける具体的な事情が要るとされたこと。もうひとつは、その事情が認められるなら、不服申立てを審理する裁判所は、それを決定の中で指摘しなければならないとされたことです。理由を書かずに追認する運用が、違法と評価されうることになります。

また最高裁は、本人が容疑を否認していることを、それだけで証拠隠しの根拠にはしていません。否認しているから面会を禁じてよい、という発想は採られなかったといえます。

家族が身柄を拘束され、面会もできないという状況に置かれたとき、その扱いに理由があるのかを問う道はある、ということを示した決定でもあります。同じような事情があれば、不服申立てが認められる可能性はあるでしょう。

その後・実務への影響

この決定は最高裁判所のウェブサイトに判例として掲載され、複数の法律事務所が刑事弁護の観点から解説を公表しています。ただし決定自体は、この事件について差戻し後の審理を求めたものであり、その後の経過は公表されていません。

なお本記事は、令和7年(2025年)8月14日時点の刑事訴訟法に基づく判断を扱っています。

本記事は判決文をもとにした解説であり、法律相談に代わるものではありません。個別の事案については弁護士にご相談ください。

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